生保協会から確定給付型企業年金の受託状況が発表されました。

以下の数値は、信託銀行、生命保険会社、JA共済連の合計です。

 

厚生年金基金の受託概要は、以下になっています。

 

  •  受託件数:256基金
  •  資産残高:24兆2070億円
  •  対前年比:22.6%減

 

確定給付型企業年金の受託概要は、以下になっています。

 

  •  受託件数:13,690件
  •  資産残高:57兆9002億円
  •  対前年比:1.0%減

 

厚生年金基金の解散が増大

大企業が多い確定給付型企業年金の減少はわずか(1.0%)ですが中小企業が多い厚生年金基金(以下基金)の解散が増加しています。

確定拠出型年金は、掛金が固定で個人の運用により年金額は変動するので運営者(基金と基金に加入している企業)には約束した年金額を支給するする責任がありませんが(確定給付型でないので)、確定給付型の基金は年金額が確定し、約束した年金額の不足分が発生すると参加企業が補います。

現在のような低金利の時代では、企業の掛金では約束した年金額(5.5%の利回り)を支払うことが困難で参加企業に資金の追加が必要になります。

基金は、中小企業が多いので追加資金の支払が困難な会社が多くなっています。

 

2012年のAIJ投資顧問による年金資産消失事件をきっかけに、2014年4月に「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が施行になり、基金の解散(代行返上)が進んでいます。

このこともあり、基金の受託が大幅(22.6%)な減少になっていると思われます。

 

厚生年金基金

公的年金制度は、3階建と言われ以下の構成になっています。

 

  •  1階部分:20歳になると誰もが加入する基礎年金(自営業者等は国民年金)
  •  2階部分:企業の従業員が加入する厚生年金(公務員は共済年金)
  •  3階部分:企業が加入する厚生年金基金あるいは確定給付型企業年金

 

厚生年金加入企業の従業員は、65歳から以下の年金を受け取れます。

 

  •  国から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金の物価調整部分
  •  基金から支給される老齢厚生年金の運営代行部分
  •  基金の加算部分

 

基金が解散すると老齢厚生年金の運営代行部分は国に返され保証(2〜3%減額)されますが、加算分は廃止になり年金額が減ります。

解散により月額年金額が、7千円から3万円ぐらい減る基金が多いようです。

65歳男性の平均寿命までの約19年間の減額額は、7千円で約160万円、3万円では684万円の減額になります。

ほとんど利子の付かない時代に5.5%の運用益を達成するのは無理で基金の解散も止む得ないところと言えますが、年金受給者にとっては厳しい時代になりました。

すでに年金を受給している高齢者は対策が困難ですが、年金受給前の人は、確定拠出年金や民間の個人年金保険などで対策を考える必要があります。